Nakane Motors / Restore アルファ・ロメオ 1600 スパイダー・デュエットの復元工程(実況中継中)

復元工程の第2弾は、過去の完成済み作品ではなく、A様からご依頼を受けたアルファ・ロメオのスパイダー・デュエット初期モデルのフルレストアを実況中継的にお伝えしていこうと思います。

アルファ・ロメオは、いわずと知れたイタリアの誇る老舗ブランドですが、特にスポーティーカーのメーカーとして名声を博し、数々の名車を世に送り出してきました。そうしたメーカーとして、なくてはならないジャンルがカブリオレ、いわゆるオープンカーです。このスパイダー・デュエットのデザインは、先代ジュリエッタ・スパイダー同様ピニンファリーナによるもので、1966年にジュネーブモーターショーでデビュー、特にボートテールと呼ばれる優美なリヤデザインが魅力の最初期のモデルです。

デュエットという車名は、オープンとクローズという二つの世界を楽しめるという意味合いかと思いますが、一般公募で決定されたとのこと。映画「卒業」でダスティン・ホフマン演じる主人公ベンジャミンの愛車として、世界中に愛好家がおられるようです。

 

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ディテールを眺めると、なるほど古きよき60年代のスポーツカーの雰囲気がよく伝わってくるエンスー好みの名車です。しかしボディー各所に手を入れる必要があり、かなり大掛かりな作業になりそうです。

実は当社がお預かりしたのは、2011年末でしたが、一部外板パネルなど海外から取り寄せられるパーツを準備していた関係(パーツが手に入るものは新規製作するよりコスト的に有利な場合が多い)で、半年近く着手が遅れていました。発注した4枚のうち、3枚は比較的早く到着したのですが、あと1枚はまったく納期が未定ということで、結局キャンセルすることになりました。納期がわからないというのは日本では非常識ですが、そこは旧車の世界、しかも海外では常識なのかもしれません。

オーナーのA様と詳細な打ち合わせを行って、いよいよ作業を開始していきます。一年後には、ベンジャミンの愛車のように、どこからみても美しいイタリアン・レッドのカブリオレに生まれ変わっているはずです。

 

まずは、現状確認をしなければなりません。怪しいところは容赦なく削ったり切開してみます。このころのクルマは、まず間違いなくホイールアーチまわりやドアシル部分など水が溜まりやすいところに腐食が進行しています。当時の防錆技術と構造を考慮すると、やむを得ないところです。

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穴の空いた外板部分はカットして作り直すことにします。内部は幸いひどい腐食を免れていたため、補修した上、進行を止める防錆塗料をしっかり施工します。

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次にはエンジン、補機類、マフラー、ミッションなどのドライブトレインをごっそり取り外します。輝きは失っているとはいえ、当時高級スポーツカーだけに許されたDOHCヘッドやツインキャブが誇らしげです。イタリア車のエンジンルームは明らかに見られることを意識したデザインになっていると感じます。こうした芸術品を蘇らせるのは本当にやりがいのある仕事です。

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 オーナーのA様のご意向もあり、細かいところは飛ばしますが、ようやくボディーの修復が終わり下地が完成に近づいてきました。

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A様には様々なレッドのサンプルプレートをお渡しし、どの色にするかをご検討いただいています。同じような赤に見えても、実は並べてみると歴代の各メーカーのレッドには結構な違いがあります。どんな色に決まるのか、スタッフも楽しみにお待ちしています。

(つづく)

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